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『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)陽キャの割り切り力は強く生きる秘訣【映画感想】

映画館に行ってみたら、コナンとマリオが人気過ぎて隅に追いやられてる感があったけど、観てきました!

marvel.disney.co.jp

 

【あらすじ(雑)】

これまで多くの問題を解決してきた、宇宙のはみ出し者集団「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」が急襲される。致命傷を負ったメンバー、ロケットを治療しようとすると、かつて受けた改造のせいで、パスコードを入力しないと安全に治療できないことが判明。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々は、ロケットの命を救うために彼の過去へと迫る冒険を始める。

 

!!!ネタバレあり!!!

 

 

 

 

 

 

普段何気なく過ごしている日常には、じつは不条理が詰まっている。

万引きを親から教えられて育った子供はどこまで責任を負うべきか?

ずっと引きこもりだったオジサンが心新たに就活を始めるのは素晴らしいが、誰が雇いたがるのか?

けれど、そんなことをいちいち気にしていたら生活が回らないので、そこはかとなく目をそらして日々を暮らす。

 

今作はもちろん娯楽なので、ノリのいい音楽やスカッとするようなアクションをノンストップで提供してくれるのだけど、同時に普段目をそらしている不条理や引っかかりを丁寧に拾って見せつけてきたので、娯楽として楽しみつつもそのエグさに圧倒された。

 

 

例えば、ロケットの回想シーンでは実験動物が沢山出てくる。

自分も普段は動物実験をしており、計測器具を固定するために手術をすることもあるので、回想シーンは胸を突かれるように感じるシーンも多かった。

もちろん自分の場合は、実験に関わる倫理を学び、先人たちの積み重ねに則り、必要最低限の苦痛や犠牲になるように計画を立てている。

けれども、実験動物、それもフロアのような子からすれば、実験の前にどれだけ配慮や工夫がなされたかは関係なく、苦痛は苦痛でしかないだろう。

結局のところ、実験上の倫理的配慮が持つ主な機能は、実験者や世間の心を宥めることなのだ。

 

個人的に、動物実験に対する罪悪感は実験手法を改善する動機となるので、完全に失うべきではないと思っている。

ただ一方で、その感受性が行き過ぎると、「ペットを可愛がったり動物園の生き物を有難がる一方で、無感動に家畜動物の肉を消費する自分気持ち悪い…」とか、「動物実験を経て開発された薬使えない…」となって、生きるのに支障をきたす。

ある程度割り切ることがコツと言える。

 

 

もうひとつ、心に残ったのが「誰にでもセカンドチャンスがある」というメッセージ。

心励まされる言葉だけれど、映画世界を見渡すとむしろ、ノーチャンスで死んでいったキャラクターの方が多い。

ハイ・エボリューショナリーに皆殺しにされたカウンターアースの住人は、自分たちの置かれていた状況を知ることすらなかっただろう。(ちなみに、動物たちをハイ・エボリューショナリーが強制進化させると皆ヒト型になるという展開は、自分とおなじヒト型こそが至高というハイ・エボリューショナリーの傲慢を示す演出だと思った。例えばニシキヘビには足の名残があり、進化の過程で足を捨てたと考えられている。生物学的に進化と言えば、その時々で環境に適した特徴が定着していくことだと考えるのが一般的だ)

だから、本当はセカンドチャンスは無いのが普通なのだ。

ただ、その貴重なセカンドチャンスを与えられた人を見た時に、そのチャンスをあるがままに認めるのか、妬みや軽蔑をもって阻害するかは私達自身が決めることだ。

映画では、「誰にでもセカンドチャンスがある」という理想的スローガンを掲げつつ、実際はそうでないこともはっきりと描かれている。

 

 

このように、「動物を傷つけるべきではないけど、ある程度は認めないと生きられない」「誰にでもセカンドチャンスが有るのが理想だけど、そうでもない」という矛盾が今作にはある。

そして、その矛盾に対する今作のスタンスが、最後のシーンではっきりと描かれている。

ロケットが、荒れ狂う宇宙生物の群れに対して「ちょっと可哀そうだがしょうがない!」と言い切って、楽しい音楽をBGMにガンガン武器をふるう(雰囲気を出す)シーン。多分、その宇宙生物たちに生き残るチャンスは無い。

このシーンを観た時に、「これが陽キャの割り切り力…強い…」と思った。

 

この映画は、作品内の矛盾を自覚して描いたうえで、めちゃくちゃ陽キャ的なノリで割り切りますよ!と主張しているのではないだろうか。

自分はそのシーンに、音楽やアクションだけでない、生きるのが上手な真の陽キャを感じた。

まあ、うじうじ矛盾に悩んでいるようでは過酷な宇宙を生き抜けないだろうから、映画の題材とのかみ合わせとしてもそれが正しいんだろうな。

 

 

陰キャくさい感想を書き連ねたけど、エンタメとしてめちゃくちゃ楽しみました!