逃げるしっぽを追いかけろ

生物学専攻大学院生の趣味ブログ・マイペース更新

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)感想

Disney+にて。

 いかにも中国四千年の歴史なコスチュームを最初に見たときはあまり興味が湧かなかったのだけど、普通のジャンパーを着てうろうろしている宣伝動画を見て、「今までとはちょっと違いそう」と観たくなった。
 完全なリアルではないだろうけど、現代のアメリカで暮らすアジア人像を見せてもらって面白かった。大事なところでは中国語を使うのも丁寧だなと。

 お酒が入っていたので、バトルシーンでめちゃくちゃテンションが上がってしまった。雷とかビームで派手に戦うのも良いんだけど、体術は緊張感が違うし動きひとつひとつに魅入ってしまう。楽しい。
 あと、ターロー村に着いた下りは、サファリパークじゃんと笑ってしまった。伝説の動物達も丁寧に造り込んであるし、すごくかわいい。

 魅入るといえば、人間関係の構図の見せ方が独特だと思った。ちゃらんぽらん対堅実家とか、柔対剛みたいな、ある意味典型的な対比をまるで演舞の型みたいにいちいち見せつけてくるので、引き込まれた(バトルの見せ方と通じていたように思う)。逆に、それ以外のちょっと疑問が湧きそうなところを勢いと映像美で流す感じとか、緩急ついてるなぁと感心した。
 妻恋しさに目の曇った父親対今を見てほしい子どもたち、って個人的にはベタな気もするけど、スター・ウォーズで映画6本かけてやっていたことが、今では様式として定着してるってことかもしれない。受け取り手と物語の共進化と言えばいいか(正確には違うけど)。

 最後に妹がちょっと悪そうな顔をしていたのは意外だったけど、考えてみれば、シャン・チーが妹の手を離さなかったシーンで兄の懺悔的な気持ちは伝わったかもしれないが、ふたりの間で明確な対話や和解は無かったなと。そういえば父の死についても、ふたりの会話は無かった。今後、そこら辺を紐解いたりするのかな。

 ケイティの存在感も新鮮だった。性格はマイティ・ソーのダーシーっぽいけど、立ち位置はもっと重要。シャン・チーとカップルにはなっても(なったよね?あの振舞は多分。少なくとも大切な人ではあるはず…)濃ゆいキスとかしないあたり、ただのアメリカ映画じゃないよってことだろうか。爽やかで好き。
 ケイティは、何かを極めたことがないというコンプレックスを滔々とまくしたてた割に、それが変わる展開は無かったように思う。まあ別に皆そんなもので、それでも案外ラッキーに支えられつつ生きてくっしょ、ってことかもしれない。考えたら、常人には耐えられなさそうな訓練で強くなったシャン・チーとか、それどころか独学で技を身に着けた妹とかの方が普通じゃない。まあ正念場で矢を当てるケイティの強運も普通じゃないけど。

 シャン・チーについては、性格とかあまり良く分からなかったし、テンリングスを使った戦闘シーンも少しだったから、これからの映画で描いていく予定かな。体術ももっと見せてほしい。楽しみ。

そういえば、ショーンでなくシャン・チーを名乗るようになるイベントとか、今後あるのだろうか。